税理士からのメッセージ
2023年06月01日
インボイス制度と独占禁止法
梅雨の季節となりました。
福岡では平年よりも1週間ほど早い梅雨入りでした。
これから1ヶ月半ほど梅雨の時期が続くこととなりますが、災害級の大雨にならないことを願いつつ、夏の訪れを楽しみに待ちたいと思います。
さて、10月から始まるインボイス制度ですが、以前より懸念されていた、仕入税額控除が制限される免税事業者との取引条件の見直しに関し、取引価格の引き下げを一方的に取引相手(免税事業者)に通告する事例が出てきているようです。
そのため、公正取引委員会は、違反行為の未然防止の観点から当該事業者に対して、「注意」を行ったとのことですが、今回は、当該事業者の社名の公表はなく、注意を行った事業者の業態と、その取引の相手方のみの公表を行っています。
制度開始までは「注意」、開始後は最悪「違反の認定」を行い社名の公表も予測されますが、今回の「注意」が、どこまで今後の違反行為に対する抑止力となるか興味深いところです。
インボイス制度開始後、免税事業者からの仕入等に係る仕入税額控除が制限(制度開始後3年間は8割、その後の3年間は5割を控除できる経過措置あり)されることに伴い、課税事業者は、取引先の免税事業者に対し、取引価格から消費税相当額の引き下げの要請を検討することとなりますが、上述のとおり、消費税相当額の一方的な値引き通告は独占禁止法上及び下請法上問題となるおそれがあります。
「取引価格の引き下げ」に関しては、仕入税額控除が制限される分について取引価格を引き下げる場合、それが「一方的な通告」ではなく、「双方が協議し納得した」うえで、取引価格を設定すれば、独占禁止法上又は下請法上問題にならないとされています。
しかし、取引価格の引き下げ交渉が形式的なものにすぎず、課税事業者の都合のみで著しく低い取引価格を設定などした場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるようです。
そのため、見直し後の取引価格の妥当性も重要となりそうです。
取引価格の設定にあたっては、「双方同意のうえ決定」が大前提にあるため、事後トラブルに備え、協議(同意)書などを作成、保管することをお勧めします。
事業者間でのインボイス事業者登録の有無の確認作業は進んでいるものと思いますが、取引価格の協議については、いまだに手付かずのケースが多いと推測しています。
10月1日の制度開始まで時間が徐々に迫ってきています。
インボイス制度における仕入税額控除の制限は、課税事業者、免税事業者双方にとって頭の痛い問題ですが、制度開始後も、円滑な取引が継続できるよう、双方が協議し納得したうえで価格の設定ができると良いですね。
福岡では平年よりも1週間ほど早い梅雨入りでした。
これから1ヶ月半ほど梅雨の時期が続くこととなりますが、災害級の大雨にならないことを願いつつ、夏の訪れを楽しみに待ちたいと思います。
さて、10月から始まるインボイス制度ですが、以前より懸念されていた、仕入税額控除が制限される免税事業者との取引条件の見直しに関し、取引価格の引き下げを一方的に取引相手(免税事業者)に通告する事例が出てきているようです。
そのため、公正取引委員会は、違反行為の未然防止の観点から当該事業者に対して、「注意」を行ったとのことですが、今回は、当該事業者の社名の公表はなく、注意を行った事業者の業態と、その取引の相手方のみの公表を行っています。
制度開始までは「注意」、開始後は最悪「違反の認定」を行い社名の公表も予測されますが、今回の「注意」が、どこまで今後の違反行為に対する抑止力となるか興味深いところです。
インボイス制度開始後、免税事業者からの仕入等に係る仕入税額控除が制限(制度開始後3年間は8割、その後の3年間は5割を控除できる経過措置あり)されることに伴い、課税事業者は、取引先の免税事業者に対し、取引価格から消費税相当額の引き下げの要請を検討することとなりますが、上述のとおり、消費税相当額の一方的な値引き通告は独占禁止法上及び下請法上問題となるおそれがあります。
「取引価格の引き下げ」に関しては、仕入税額控除が制限される分について取引価格を引き下げる場合、それが「一方的な通告」ではなく、「双方が協議し納得した」うえで、取引価格を設定すれば、独占禁止法上又は下請法上問題にならないとされています。
しかし、取引価格の引き下げ交渉が形式的なものにすぎず、課税事業者の都合のみで著しく低い取引価格を設定などした場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるようです。
そのため、見直し後の取引価格の妥当性も重要となりそうです。
取引価格の設定にあたっては、「双方同意のうえ決定」が大前提にあるため、事後トラブルに備え、協議(同意)書などを作成、保管することをお勧めします。
事業者間でのインボイス事業者登録の有無の確認作業は進んでいるものと思いますが、取引価格の協議については、いまだに手付かずのケースが多いと推測しています。
10月1日の制度開始まで時間が徐々に迫ってきています。
インボイス制度における仕入税額控除の制限は、課税事業者、免税事業者双方にとって頭の痛い問題ですが、制度開始後も、円滑な取引が継続できるよう、双方が協議し納得したうえで価格の設定ができると良いですね。
posted by 山崎義孝税理士 at 18:30| 消費税についての一言メモ
2023年05月02日
売手が負担する振込手数料に係るインボイスの処理
最大で9連休となるゴールデンウィークがいよいよ始まりました。
今年の連休は行動制限がないことから、久しぶりに旅行に出かける方々も多く、観光地を中心に人手が増加しているようです。
制限のあおりを受けていた子供たちに、様々な体験ができる機会が徐々に戻ってきたことは大変喜ばしいことですね。
さて、今回のテーマは、「売手が負担する振込手数料に係るインボイスの処理」についてです。
取引に係る代金の支払いの際に、買い手側が振込手数料相当額を差し引いた金額を振り込むケースがあります。
この場合、通常売り手側は、@振込手数料の支払い(負担)、またはA売上げの値引きとして経理処理(支払手数料・売上のマイナス)を行ないます。
インボイス制度開始後の対応ですが、
@については、買い手による振込手数料の立替えとして、売り手側は買い手側よりインボイスと立替金精算書の交付を受ける必要があります。
Aについては、売り手による売上の値引きとして、売り手側は買い手側に対して返還インボイスを交付する必要があります。
このように、@・Aどちらのケースでもそれぞれ対応が必要となり、これが新たな事務負担になると懸念されていました。
これらの問題に対応するため、「令和5年度税制改正大綱」において、全ての者を対象に「1万円未満の適格返還請求書(返還インボイス)交付義務免除」という対策が新たに設けられました。
これにより、売上に係る対価の返還等(返品、値引き、割戻し)に係る税込金額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されることとなり、上記Aの場合のインボイスの交付は不要となり、これまで通りの処理が可能となります。
なお、この「1万円未満」の判定単位については、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに減額した金額で判定することとされています。振込手数料の負担は、数百円であることから、この交付義務免除の恩恵を受けることができます。
@の場合についても、先般、国税庁が追加・改訂したインボイスQ&Aで、「経理処理を支払手数料としつつ、消費税法上、売上対価の返還等とすることもできる」という取扱いが示されており、こちらも実質的にはインボイスが不要(交付義務免除)となりました。
インボイスに係る取り扱いに関しては、定期的に追加・改訂が行われており、以前に比べると簡素化されてきている印象があります。
インボイス発行事業者の登録済み割合は、法人の課税事業者は約9割、個人事業者の課税事業者は約5割で、免税事業者の登録件数は、全体で約43万件となっています。申請件数でみると、全課税事業者の約9割が申請済みのようです。
当初は駆け込み申請も懸念されていましたが、課税事業者については、その心配はあまりなさそうですね。
今年の連休は行動制限がないことから、久しぶりに旅行に出かける方々も多く、観光地を中心に人手が増加しているようです。
制限のあおりを受けていた子供たちに、様々な体験ができる機会が徐々に戻ってきたことは大変喜ばしいことですね。
さて、今回のテーマは、「売手が負担する振込手数料に係るインボイスの処理」についてです。
取引に係る代金の支払いの際に、買い手側が振込手数料相当額を差し引いた金額を振り込むケースがあります。
この場合、通常売り手側は、@振込手数料の支払い(負担)、またはA売上げの値引きとして経理処理(支払手数料・売上のマイナス)を行ないます。
インボイス制度開始後の対応ですが、
@については、買い手による振込手数料の立替えとして、売り手側は買い手側よりインボイスと立替金精算書の交付を受ける必要があります。
Aについては、売り手による売上の値引きとして、売り手側は買い手側に対して返還インボイスを交付する必要があります。
このように、@・Aどちらのケースでもそれぞれ対応が必要となり、これが新たな事務負担になると懸念されていました。
これらの問題に対応するため、「令和5年度税制改正大綱」において、全ての者を対象に「1万円未満の適格返還請求書(返還インボイス)交付義務免除」という対策が新たに設けられました。
これにより、売上に係る対価の返還等(返品、値引き、割戻し)に係る税込金額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されることとなり、上記Aの場合のインボイスの交付は不要となり、これまで通りの処理が可能となります。
なお、この「1万円未満」の判定単位については、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに減額した金額で判定することとされています。振込手数料の負担は、数百円であることから、この交付義務免除の恩恵を受けることができます。
@の場合についても、先般、国税庁が追加・改訂したインボイスQ&Aで、「経理処理を支払手数料としつつ、消費税法上、売上対価の返還等とすることもできる」という取扱いが示されており、こちらも実質的にはインボイスが不要(交付義務免除)となりました。
インボイスに係る取り扱いに関しては、定期的に追加・改訂が行われており、以前に比べると簡素化されてきている印象があります。
インボイス発行事業者の登録済み割合は、法人の課税事業者は約9割、個人事業者の課税事業者は約5割で、免税事業者の登録件数は、全体で約43万件となっています。申請件数でみると、全課税事業者の約9割が申請済みのようです。
当初は駆け込み申請も懸念されていましたが、課税事業者については、その心配はあまりなさそうですね。
posted by 山崎義孝税理士 at 17:30| 消費税についての一言メモ
2023年04月04日
インボイス制度開始まで残り半年
今月から新年度が始まりました。
卒業式が終わり、新たな門出を迎える方々も多いことと思います。
今年の桜の開花は、全国的に平年より早い傾向のようで、福岡では比較的天候にも恵まれ、今年は花見を楽しめる期間も長いように感じます。
時期的に花粉症に悩まされている方も多いと思いますが、アレルギーに負けず「春」を満喫したいものですね。
さて、インボイス制度開始までいよいよ半年余りとなりました。
今回は、「相続」により免税事業者である相続人が、インボイス発行事業者である被相続人の事業を承継するケースについて説明します。
まず、インボイス発行事業者の登録は、「事業者単位」で行われます。
したがって、相続のケースでは、インボイス発行事業者の地位は、相続人には引き継がれないこととなるため、相続人はインボイス発行事業者の登録を新たに行う必要があります。
免税事業者等である相続人が事業を承継する場合、その相続人がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間は、インボイスの発行が出来ず、事業に支障をきたす恐れがあります。
そのため、税法上において以下の手当てがされています。
1)個人事業者のインボイス発行事業者が死亡した場合、相続人は「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を所轄税務署長へ提出する必要があります。
2)死亡したインボイス発行事業者(被相続人)の登録の効力は、「適格請求書発行事業者の死亡届出書の提出日の翌日」または「死亡した日の翌日から4か月を経過した日」のいずれか早い日に失効されます。
3)相続開始後の最長4か月間は「みなし登録期間※」として、相続人はインボイス発行事業者とみなされ、被相続人の登録番号が相続人の登録番号とみなされることとなります。
※みなし登録期間
相続のあった日の翌日から(1)(2)のいずれか早い日までの期間
(1)相続人がインボイス発行事業者の登録を受けた日の前日
(2)被相続人が死亡した日の翌日から4か月を経過した日
以上のとおり、みなし登録期間の末日の翌日でインボイス発行事業者の登録の効力が失効し、インボイスを発行できなくなることから、事業を承継する相続人は、みなし登録期間中(最長4か月間)に登録申請を行う必要があります。
また、みなし登録期間については、相続人は課税事業者として申告を行う必要があります。
相続開始時は大変な時期ではありますが、4か月という期限が設けられているため、事業を承継する相続人は忘れずに登録申請を行ってください。
卒業式が終わり、新たな門出を迎える方々も多いことと思います。
今年の桜の開花は、全国的に平年より早い傾向のようで、福岡では比較的天候にも恵まれ、今年は花見を楽しめる期間も長いように感じます。
時期的に花粉症に悩まされている方も多いと思いますが、アレルギーに負けず「春」を満喫したいものですね。
さて、インボイス制度開始までいよいよ半年余りとなりました。
今回は、「相続」により免税事業者である相続人が、インボイス発行事業者である被相続人の事業を承継するケースについて説明します。
まず、インボイス発行事業者の登録は、「事業者単位」で行われます。
したがって、相続のケースでは、インボイス発行事業者の地位は、相続人には引き継がれないこととなるため、相続人はインボイス発行事業者の登録を新たに行う必要があります。
免税事業者等である相続人が事業を承継する場合、その相続人がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間は、インボイスの発行が出来ず、事業に支障をきたす恐れがあります。
そのため、税法上において以下の手当てがされています。
1)個人事業者のインボイス発行事業者が死亡した場合、相続人は「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を所轄税務署長へ提出する必要があります。
2)死亡したインボイス発行事業者(被相続人)の登録の効力は、「適格請求書発行事業者の死亡届出書の提出日の翌日」または「死亡した日の翌日から4か月を経過した日」のいずれか早い日に失効されます。
3)相続開始後の最長4か月間は「みなし登録期間※」として、相続人はインボイス発行事業者とみなされ、被相続人の登録番号が相続人の登録番号とみなされることとなります。
※みなし登録期間
相続のあった日の翌日から(1)(2)のいずれか早い日までの期間
(1)相続人がインボイス発行事業者の登録を受けた日の前日
(2)被相続人が死亡した日の翌日から4か月を経過した日
以上のとおり、みなし登録期間の末日の翌日でインボイス発行事業者の登録の効力が失効し、インボイスを発行できなくなることから、事業を承継する相続人は、みなし登録期間中(最長4か月間)に登録申請を行う必要があります。
また、みなし登録期間については、相続人は課税事業者として申告を行う必要があります。
相続開始時は大変な時期ではありますが、4か月という期限が設けられているため、事業を承継する相続人は忘れずに登録申請を行ってください。
posted by 山崎義孝税理士 at 17:00| 消費税についての一言メモ